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タイトル いま注目の「The 危ない会社(経営診断ソフト)」で倒産の予知はどこまでできる?
掲載誌 雑誌「企業実務」(日本実業出版社)
企業の総務や管理部門向けの月刊誌。直販のみで店頭売りはしていない。
掲載年月 1999年12月号(No.519)
執筆者 井上きよみ
記事の解説 本当は、実際の倒産企業の財務データを入れて倒産判定の確からしさを検証する内容となるはずであったが・・・。(詳細は「雑誌原稿・記事こぼれ話」を見てほしい。) できあがった原稿は、残念ながら執筆者本人も「いい出来」とはとても言えないものに。



書籍表紙

いま注目の「The 危ない会社(経営診断ソフト)」で倒産の予知はどこまでできる?

電機連合が開発した「経営診断ソフト」が反響を呼んでいる。財務データを打ち込めば、「倒産」の危険度がたちどころにわかるというが、どういう仕組みになっているのか。ソフトの中身を検証する。

●止まらない企業倒産

今夏頃より景気は緩やかに回復基調というものの、雇用情勢はますます厳しさを増している。厳しいリストラで何とか倒産は免れている企業、それすらもかなわず倒産してしまった企業・・・。

ことし9月の1ヶ月間だけでも、負債総額1423億円の苫小牧東部開発者をはじめ、夏目商事、白不二、草津丸三住宅、日興、広興、むつみなど、全国で1372のきぎょうが倒産した。これは、前月8月に次ぐ本年2番目の高水準である。10月末までで、負債総額100億円以上の倒産件数はすでに7件にも上り、なかには店頭公開企業も含まれている。

ところで、そもそも「倒産」という言葉の定義が曖昧であるが、一般的には債務者の決定的な経済破綻、つまり債務弁済が不可能となり、ひいては経済活動そのものを続行することができない状態を指す。東京商工リサーチでは銀行取引停止処分、会社更生法、商法による会社整理、和議法、自己破産、特別清算などのいずれかに該当するものを倒産と定義づけている。

この「倒産」の危険度を判定できるコンピュータソフトが発売され、大きな話題を呼んでいる。電機産業の労組でつくる電機連合(80万人)が開発した「The 危ない会社」がそれだ。

ことし6月末から加盟組合に配布され、9月からは9万8000円で市販もされているものだ。これまでの実績は加盟組合に対しておよそ1000本、市販分については250本程度が売れたという 。

このソフトはもともと労組が自社の経営診断を簡単にできるようにというコンセプトで開発されたものだが、経営や財務のエキスパートではなくても、売上などのデータを入力することで会社の経営の判断ができるので、「得意先の信用調査に使いたい」との需要も結構ある。

上場会社の倒産が珍しくなくなったこのご時世にあって中小企業はあわや連鎖倒産というピンチに見舞われることもあり得る。そのため、リスクマネジメントに活用するというわけだ。

診断には貸借対照表、損益計算書などの正確なデータを入手することが大前提だが、本当に「倒産予知」ができるのか、ソフトの中身について見てみたい。

●”絶対評価”が可能なソフトを自主開発

はじめに「The 危ない会社」はどのように開発されたのか。
企業の倒産が相次いでいるのは前に述べた。電機連合加盟の組合企業のなかにも、倒産の危機に瀕するケースが出てきていた。倒産という最悪の事態を招かないように、労組側で実際に倒産した企業の共通項を探してみると、そうした企業は経営分析をほとんどしていなかったことがわかった。


組合企業でも経営分析は必要とわかっていながら、知識がないためにそれができないでいたことろが少なくなかったのである。

「これではいけないということで、経営指標の評価ができるコンピュータソフトを組合企業に導入しようと考えたのがきっかけだった」と開発担当者は言う。

当初、市販のソフトを活用しようとしたが、労組が重視した経営指標の評価機能が不十分だったため、結局は内部製作に踏み切った経緯がある。

労組が欲しかった評価機能とは、「倒産の危険度を

階 に分けて
判定るな”絶対評価”の機能である。


こうした機能をもつ経営診断ソフトは、世間にほとんど出 回っていなかった。

開発にあたったのは電機連合のシンクタンクである電機総研、経営コンサルタント、中小企業診断士の三者で構成されるメンバー10名で、約10ヶ月で完成にこぎつけた。

企業組合内で、必要なデータがいつでも活用できたこと、電機業界だけにコンピュータの知識は豊富だったことが短期間で開発できた要因である。

では実際に、ソフトの中身について見ていきたい。

まず、決算書から「現金預金」「売上」「販売管理費」といった項目の数字を、ソフト内の貸借対照表、損益計算書の同科目に入力する。その後、「総合分析」と「判定」の2つのボタンを押すと、流動比率など20項目以上の経営指標を計算して表示される。

この表示された数値をもとに健全性が5段階で評価される。さらに安全性、収益性、生産性の3項目に集積され、最終的にトータルでの健全度がS・A〜Eの6段階で出る仕組みだ。

数値は5が、またトータル値はSが最高である。よい状態のところは青色表示される。反対にEは赤色、つまり倒産の危険性ありという結果となる。

また、こうした「数量」のアプローチのほかに、「危なさ」を匂わせる数値化できない社内の雰囲気を50の設問により判断するという「定性分析」を行えるようにしたところに、このソフトの特徴がある。

例を挙げると、「負採算部門があるのにそのまま放置されている」といった設問に答えていくことで、倒産の危険性を判定できるのだ。

各項目はその1つを取り出して詳細に見ることができたり、最新年度の財務データをもとにした来年度のシュミレーションもできるようになっている。同業他社との比較なども可能だ。

財務データによる危険性の判断は、経営指標ごとに1〜5の段階をつける範囲が決まっていて、これをもとに判断される。

同じ指標でも業種ごとにその数値が違うので、正確な判断をするためには自社に最も近い業種を指定する必要がある。

●中堅規模以上の製造業に最適

このソフトで肝心になってくるのが”評価基準”がどのようにつくられたかだ。開発に当たっては、電機連合の加盟企業を対象に実名で財務データを集め、このデータをもとに独自に評価基準をつくったのである

定性分析についても開発チームが設問を用意し、加盟企業に実名でのアンケート調査を行った。その結果から実社名をもとに、それぞれの会社の業績ごとに、「よい」「普通」「悪い」の3つに分け回答傾向を分析ソフトで洗い出し、評価の基準をつくっている。

とはいうものの、自社の経営診断に活用するために作られたソフトであるため、定性分析で他社の倒産の危険性を調べることは、もともと想定されていない。ただし、複数の評価結果を画面で一覧し、比較検討することが可能であるなど、たいへん使い勝手はよいものとなっている。

さらに、この分析機能では、「不良在庫が急増している」「担保の設定額と借入時の借入金額との間に大きな差がある」というような、関係者でなければ把握できない設問があった。回答に、「わからない」が多すぎると判定不能になることもある。

もし、他社の信用調査にこのソフトを使うとすれば、経営指標からの判断ということになる。もちろん、これも財務諸表、つまり決算書の正確な数値を入手する必要がある。決して入力項目は多くはないが、概況的なものでは駄目で、ある程度きちんとした決算書でなければ数値を拾い出すことができない。

診断したい会社が上場会社であれば財務データの入手も可能だが、中小企業の場合はそれが問題になってくる。社内外へ財務データを公開しているところは限られるからだ。

そのため、一定規模以上の製造業には使いやすいが、規模の小さい企業やサービス業では、このソフトだけでの健全度(危険度)判断はむずかしいといえる。

できる限り実データで検証してみたいので、当社のデータを入れて判定した。ちなみに、当社の業種は「サービス業」もしくは「情報サービス・調査・広告業」が最も近く、その両方で判断してみたが、結果はほば同じで、また、予想以上によい判断が出た。

経理担当者ともその結果を検証したが、「製造業以外の業種でも、もっと細かい業種分けをしなければ、結果の妥当性は高くならないのでは」というのが共通した認識である。

データを詳細に分析するには、やはり簿記3級程度の知識は最低限必要だろう。とはいえ、倒産の判定はともかく、財務データが何年分か入力できる状況であれば、趨勢グラフなどが即時に表示され、経営分析資料としては非常に役立つ。

最終的には、出てきた数値をどう読むか、という人間の判断によるところが、最も大切なのかもしれない。


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