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タイトル 困ったときにすぐわかる 内容証明の書き方・出し方
著者/出版社 小川 義龍/オーエス出版社
本体価格 1,400円+税
評者 磯野康孝(2001年8月29日)



その昔、筆者が若かりし頃、恥ずかしながら一種の悪徳商法に引っかかりかけたことがある。いわゆる「アポイントメントセールス」といわれるものだ。ある日突然電話がかかってくると、「おめでとうございます。お客さまに1等が当りました。」とか「無料のサービスです。」などとおいしい話をされる。もっと詳しい話をといわれて事務所に行くと、強引に高額商品の契約をさせられてしまうというものだ。

商品には羽毛布団やリゾートホテルの会員権といったものなどがあるが、筆者の場合は英会話のカセットだった。購入するとその会社が契約している各地のリゾート施設を優待利用できるという特典付きで、これがかなりお得だという。英会話の勉強ができて、しかもリゾート三昧、というわけだ。カセットの値段は、確か60万ぐらいだったと思う。

場所は新宿の住友ビルのオフィス(50階ぐらいだったかな)。大学に入ったばかりで希望に燃えていた(?)筆者は、販売員の口車に乗ってまんまと契約書にサインさせられた挙げ句、5千円の手付けまで払ってしまった。毎月いくら払う契約だったのか覚えていないが、冷静に考えれば大学生が簡単に払える額ではなかっただろう(月1万円以上のはず)。家に帰ってからそのことを親に指摘され、だんだんと不安になってしまった。

実は、筆者は法学部の出身である。当時は、なぜか司法試験を目指す同好会にも入っていて、とりあえず、そこら辺の学生よりは民法をかじっていたので「売買契約の解除」とか「解約通知」といった言葉はすぐに浮かんできた。が、当然の如く実務知識はゼロ。本当に解約できるのか、相手にどうアプローチしていいのかすらわからない始末。結局、同級生の親父さんが弁護士だったことを思い出し、電話で相談することにした。

ことの顛末を話すと、親父さん曰く「ダメでもともと。とりあえず内容証明を出してみなさい。」情けない話だが、ここで初めて内容証明郵便というものを知った。記述する文章を教えてもらうと、文房具屋にカーボン紙と専用用紙を買いに走ったことを覚えている。内容証明を出した後、件の会社に電話し契約を解除したい旨を申し出たところ、あっさりと契約はなしに。しかも、5千円の手付け金も戻ってきた。

まあ、向こうも学生からいきなり内容証明が来たということで、面倒になるかもしれないと踏んで解約に応じたのだろう。かなりラッキーだった面もあるが、やはり内容証明の威力が大きかったと思う。内容証明というのは、それだけ効果や影響力があるものなのだ。

本題に入ろう。社会人として生活していれば、公私を問わず、いつ何時トラブルに巻き込まれるともわからない。中でも法律が絡んでくる場合、一通の内容証明郵便がその発端になることも多い。そうなったとき、送る側、受け取る側、どちらの立場に立つにしても、内容証明の知識を持っているのといないのとでは話がまったく違ってくる。で、本書の登場だ。

本書の特徴は、何といってもその「読み易さ」だろう。さりげなく法律用語を織り込みながら、内容証明の意味や効用などを平易に解説している。一般にこういった実用文例集はその道の専門家が書くため、小難しかったり特殊な言い回しを多用したりして、とかく読みにくいことが多いのだが、本書は明らかに違う。ともかく読み易く、分かりやすいのだ。もちろん、肝心の例文についても必要十分なものが載っている。

「裁判沙汰」というと遠い話のように思っている人も多いだろう。しかし、それは自分勝手な幻想に過ぎない。特に、ビジネスに絡んだ法律トラブルは日常茶飯事だ。うっかり足下をすくわれないためにも、ビジネスマンたるもの最低限の法律知識は欲しいところだ。せめて内容証明の何たるかは、しっかり把握しておいた方がいい。本書を強くお薦めする。

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