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倒産企業の財務データはいずこに?
 1999年11月8日 井上 きよみ

企業実務12月号」に載せる記事を書いた。 企業の倒産を判定する「The危ない会社」というソフトを試し、倒産した企業の実データを使い、その倒産判定の確からしさを検証するというのが、出版社からの依頼内容であった。

送られてきたソフトをインストールし、起動した。当然のことといえば当然のことだが、倒産の危険性を判定するための元となる、財務諸表(貸借対照表、損益計算書)の数値を入力する画面が表れた。

画面を見た途端、入力するための実データをどこから仕入れるのか、という素朴かつ強力な疑問がフツフツと湧いた。インターネットにあるかな、とも思ったが、「倒産企業」を条件とした時、ホントにあるのだろうか? 早速ネットサーフィンをしてみたが、どうもなさそうだ。

基本的に無駄だと思う努力を嫌う私は、この時点で出版社に電話した。出版社に尋ねた方が早そうだからだ。しかし、その返答は「こちらでも探してはみますが、できれば御社でやってほしい」とのこと。 情報はタダではない。仕入れるには、相応の対価を払わなければならないこともある。

しかし、とにもかくにもデータを探さなければならなくなったことだけは事実だ。

●実データはいずこに

困った点は倒産企業という一点に集中する。 再び、私はインターネットで探した。帝国データバンク、東京商工リサーチ、日本証券業協会、東京経済等はもちろん、何か有益なリンクはないかと、ComTrackやYAHOO!JAPANなども覗いた。 確かに倒産企業名や上場企業の財務諸表を取り出せることはできたが、倒産企業の財務諸表はどこにもなかった。

足で稼ぐしかないか。石田氏から「中央図書館はどうか」と言われた。原宿にあるので、自転車で10分程度と確かに近い。明日の開館時間を待つことにした。 が、彼にさらに詳細を聞いたところ、「そこまで詳しい財務資料はきっとないよ。それだったら、東証(東京証券取引所)の方がいいんじゃない?」とのこと。 ここには有価証券報告書などを見れる閲覧室がある。確かにここなら・・・。

が、現地からの報告は芳しいものではなかった。仕方なく危なそうな銀行2行の財務諸表をコピーし、引き上げてもらった。

しかし、さすがに銀行の資料は、一般企業の財務諸表とは違いすぎる。結局は足でも稼げなかった。

●記事の確かさ、それともコスト?

これらのいきさつを出版社に報告した。 出版社からは「帝国データバンクから直接、倒産企業のデータをもらえるか、尋ねてみる」とのこと。

次の日、出版社から回答があった。「データを入手するには相当の料金を支払わなければならない。今回は、その決裁がおりないので、実データを使うのは不可能。実データなしで記事の執筆を」と。

これでは、記事の目的である倒産の確からしさは検証できない。が、それはもう仕方ないこと。今さら仕事を降りることはできない。かと言って、大赤字を覚悟し、自社負担してまでその情報を入手する気にはなれなかった。

が、記事は書いた。とにかく書いた。が、満足のいく記事かといえば、そうではない。出版社も同じ意見のようだが、「こればかりはどうしようもないですねえ」とお茶を濁すしかない。

記事に限らず、すべての仕事にコストはつきものだ。いかにコストとのバランスをとっていくか、ということだ。 今回の記事、そのバランスは本当にとれたのだろうか? 残念ながら未だに疑問である。

そして、本が出版され、こんないきさつがあったとは知らない読者が、この記事を読んで、果たしてどう思うだろうか?

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